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書評 ―著:大原國章―大原アトラス1 ダーモスコピー
栗原 誠一
1
1湘南皮膚科
pp.833
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412104137
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不思議なアトラスである.筆者が撮りためた精細な写真集かと思いきや,読み進めるうちにいつの間にかダーモスコピー(以下,ダーモ)が自分の診療ツールになり,覗くことが楽しめるようになってくる読み物だったのだ.わたしのような素人には,ダーモとはこういうものだと迫ってこないところが好ましく,もっと早くこの本と出会っていたら,ダーモと上手につきあえたのではないかと思った.
大学関連施設の勉強会でのこと,近くの病院に頼んだ例が提示された.腹部に角化の強い赤みがかった局面があり,視診でBowen病と診断をつけて手術を頼んだ.ところがその病理組織は表在型基底細胞上皮腫であった.当然ダーモの所見も供覧されたが,組織標本ができてから見直して,この片隅に見える血管が樹枝状血管ということなのでしょうね~という意見で締めくくられた.ダーモとはこういうものだと納得した.ダーモがどのくらい役に立っているか調べたことはないが,わたしの外来では悪性腫瘍を心配して受診した患者さんに「この装置で見れば良性悪性の判断が一発でできる」と安心してもらうために使うことがほとんどである.同世代の友人達も同じようなものらしく,臨床でわからないときはダーモでもわからない,結局は病理組織を見るほかにないという話になる.そう考えると,ありがたいツールであるには間違いない.病院に頼むべきか否かを悩まずに選別できるメリットは計り知れない.
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