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毛包には組織保護に働く特殊な免疫学的特権(immune privilege:IP)が存在すると考えられており,毛包におけるMHC class Ⅰの低発現抑制や成長期毛下部からの免疫抑制物質の分泌などがその根拠とされている.また,毛包におけるIPの破綻は円形脱毛症などの発症につながる可能性があると考えられている.しかし,これまで毛包のIPについての機能的な解析はあまり行われておらず,その維持機構についてさらなる検討が必要である.本研究では健常なヒト成長期毛包から峡部(sheath),毛球部(bulb)のケラチノサイトを分離し,免疫応答細胞との相互作用やIPの維持に寄与すると考えられる分子の発現について,健常表皮ケラチノサイトと比較,考察した.
まず,sheath, bulb由来ケラチノサイトと表皮ケラチノサイトを末梢血単核球細胞と共培養したところ,表皮ケラチノサイトと比較して,bulb, sheath由来ケラチノサイトと共培養した単核球からのINF-γ分泌量,またINF-γやKi-67を発現するCD4,CD8細胞数は少なかった.次にsheath, bulb由来ケラチノサイトにおけるIP関連遺伝子発現を評価すると,β2ミクログロブリンやHLA-DP,HLA-DR,HLA-DQ発現が低下する一方でHLA-Gの発現は増強していた.またPCR法を用いた定量評価にて,sheath, bulb細胞で免疫調整因子であるソマトスタチンの強発現を認めた.免疫組織化学的に検討すると,やはりsheath, bulbのケラチノサイトではソマトスタチンの陽性反応が確認された.また,表皮,sheath,bulbそれぞれのケラチノサイトの培養上に含まれるソマトスタチンの量をELISA法で測定したところ,特にsheath由来ケラチノサイトにおいて分泌量が増大していた.さらに,表皮ケラチノサイトと末梢血単核球細胞にソマトスタチンを加えて培養するとINF-γ分泌量の抑制が確認され,ここにソマトスタチンレセプター阻害剤であるcSSTやソマトスタチン分泌を抑制するSSTR1を加えるとINF-γ分泌量が増加することが確認された.
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