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「原著」とは,広辞苑によると「翻訳や改作のもとになっている著作.原作」とあります.一般社会では,その説明でなるほどと納得できます.さて,本誌の区分で「原著」があり,「症例報告」とはどのように異なるのでしょうか.「原著」は,英語ではoriginal articleで,目的,材料と方法,結果,考按,結語の要素が明確に書かれ,医学の課題の新たな証明や仮説を発表するものと言えます.基礎医学の研究論文であれば,多くは「原著」になるでしょう.一方,臨床医学ではと言うと,やはり目的を持って確かな方法で症例の臨床データや材料を検討して,病態,治療,予後などについての新たな考え方,ときには新たな疾患を報告するなどするものと言えます.では「症例報告」の論文はと言うと,「はじめに」で報告する意義は述べるのですが,研究論文のような「目的」はありません.医学的に価値のある,あるいは珍しい症例を経験したので,その内容を記述して,医学的データとして残すものと言えます.もちろん,「目的」を設定して,多くの症例を報告しつつ解析して,新たな知見や仮設を提案すれば「原著」になります.残念ながら,近年の本誌は,「原著」論文はきわめて少なく,「症例報告」論文が大部分を占めています.ときに「原著」掲載希望という投稿もありますが,著者が区分の違いを理解せず,単に原稿枚数が多いだけであったり,教科書のような記述を長々としていることが多くみられます.ただ,本誌の「症例報告」はいわゆるmini reportとは異なり,報告する意義を明瞭にして,症例について必要十分に記述し,従来の知見や考え方を踏まえて十分に考案して,充実した内容の論文になっています.われわれも,その症例を報告することで,医学に貢献できることを念頭に置いて審査しています.それゆえ,日本皮膚科学会の皮膚科専門医の前実績としても本誌の「症例報告」は「原著」相当としてカウントされています.
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