Derm.2013
視れば診なくてもわかる?
大西 誉光
1
1帝京大学医学部皮膚科
pp.67
発行日 2013年4月10日
Published Date 2013/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103646
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「視れば大体の皮膚疾患はわかる(診断がつく)」.臨床に秀でた大先輩の言葉である.視診で大方の皮膚疾患の見当はつく.確かにそうであり,皮膚科学の他科にはない醍醐味や特徴であろう.視れば見ていなかったこともわかる場合もある.特徴的な分布の下眼瞼の湿疹性病変の女性患者に「アイラッシュカーラーを使っていませんか?」「はい使っています」など.では問診はしなくても良いのだろうか? 大先輩も「問診はしなくて宜しい」と言っていたのではない.問診をきちんと取ることによって視診では想定されない思わぬ疾患が鑑別に挙がり,診断の一助となる場合もある.しかし日常診療できちんと問診ができているのであろうか?
学生や研修医に患者面接後に症例提示をして貰うと病気や症状の経過(現病歴)ではなく,患者がいかにして当院を受診するに至ったか(病院遍歴など)経緯の物語を聞かされることも多い.不安を抱える患者は症状の経過より自分の推理や診断をまじえて時系列で来院までの経緯を話したがる傾向にある.患者は医学生以上に慣れていないので仕方のないことである.そこで忙しいと,ついおろそかになったり,または患者の話を遮り不興を買うこともある.OSCE(objective structured clinical examination,客観的臨床能力試験)が本邦の医学部にも導入され,医学部の教員はかつての自分は習っていないが医療面接法などの学生指導にあたることになる.この方法論によると(理想論ではあるが),面接の冒頭からは閉ざされた質問は避け,患者の話を遮ってはならず,患者の話を傾聴し,苦しみに共感しなくてはならない.
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