- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)に対する閉鎖療法は手順が煩雑である,副作用が明確でないことを理由に普及していない現状がある.ADに対する閉鎖療法の効果,副作用に対する大規模臨床研究はいまだ発表されておらず,検証が必要と思われた.そこで,検索データベースとしてPubMed,EMBASEを使用し,1996年1月~2009年2月の期間のADに対する閉鎖療法の論文を検索した.検索語彙はocclusion, occlusive dressing, wet wrap, atopic dermatitis, dermatitis or eczemaとした.結果,wet wrap therapy(WWT)に対する論文は計14本(randomized controlled trial:RCT 5本),dry occlusion therapyに対する論文は計4本(RCT 1本)であった.ただし,いずれの論文においても,対象人数,治療期間,外用ステロイドランクはさまざまであり,疾患重症度も統一されていなかった.エビデンスレベルの高いRCTにおいてもコントロール群が,単純塗布,保湿剤塗布とさまざまであった.WWTに対するRCT論文は主に重症AD,中等症ADに関するものであった.これらの研究から,重症ADに関する短期間治療の有効性が示された.ただし,中等症ADに関しては,単純塗布群とWWT群で統計学的有意差はなかったという報告があった.これらの結果に対しては,使用するステロイドランクや設定研究期間が適切であったかという吟味は必要であると思われた.副作用に関しては,ステロイド塗布WWT群において毛包炎,膿痂疹,化膿性結膜炎などの感染症が報告された.皮膚線状,皮膚萎縮に関しては,研究期間が短く軟膏濃度を希釈しているため報告はなかった.成長・骨異常に関しても,短期間の調査ではあるが有意差は認めなかった.視床下部-下垂体-副腎抑制に関しては,一部の研究においては治療終了後に認めたが,短期間で正常範囲に回復していた.以上,今回の検証により,閉鎖療法の重症ADに対する短期治療の有効性は示された.ただし,大規模研究がない現段階では,研究期間やプロトコールの基準がないため,各研究結果を比較しあうことが難しいという問題点も同時に示唆された.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.