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文献紹介 皮膚細菌叢の一過性変化は,小児アトピー性皮膚炎の増悪や治療と関連する
川崎 洋
1
1慶應義塾大学
pp.802
発行日 2013年9月1日
Published Date 2013/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103775
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アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)ではStaphylococcus aureusの皮膚への定着,感染がしばしば認められ,抗菌治療を含む治療法が選択されることが多い.しかし,細菌群のADの病態への関与はいまだ明らかになっていない.本研究では,小児AD患者の皮膚から病勢に応じてサンプリングを行い,16SリボソームRNA遺伝子配列解析の手法を用いて,皮膚細菌叢とADの病勢との関係について解析した.
AD患者では健常人に比べ,特に疾患増悪時に皮膚細菌叢の構成が大きく変化していることがわかった.AD増悪時は,直近に何らかのAD治療の既往があれば細菌叢の多様性が維持されるが,治療をしていないと細菌叢の多様性が減少していた.本結果は,AD治療が皮疹の改善を認める前の時点で,細菌叢の構成に影響したことを示唆する.さらに,AD患者では疾患の増悪,重症度に相関して皮膚のStaphylococcus aureusの割合が増加することがわかった.また,皮膚常在菌の一種であるStaphylococcus epidermidisはADの増悪時に割合の増加を認めたが,Streptococcus, Propionibacterium, Corynebacteriumなどの種は,AD増悪時に割合が減少し,AD治療により回復した.これらの結果は,皮膚細菌叢内で個々の菌種間に複雑な相互作用が存在していることを示唆し,これがADの病態に影響すると考えられる.
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