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患者さんと向き合っていることで,多くのことを勉強した.発疹の変化の観察は重要で,今でも大変お世話になっている先輩に以前,じっとしていてずうっと見張って観察していても発疹はそう急には変化するものではない,が経過を見ることはとても大事である,と教わった.確かに,例えば外来で定期的に通われる患者さんより,環状肉芽腫で発疹の拡大する様子や,湿疹三角での原発疹と続発疹との関係を含めた時間経過の様子を診ることもできた.四次元皮膚科と名付ける先生もいらっしゃるところである (皮病診療30:351, 2008).
このような発疹の観察もさることながら,患者さんとのやりとり,いわゆるムンテラも勉強になる.やはりお世話になっている別の先輩からは,ある病院では特に,患者さんからの「原因は何ですか」という質問が多い,とご教示頂いた.その病院に実際に勤務して,これが本当であることを実感した.まるで,患者さん同士が示し合わせたかのように,この質問をされるのである.例えば,アトピー性皮膚炎に関し,比較的時間をかけてアトピー素因と環境因子,掻破が悪化因子であることなどをお互いにコミュニケーションをとりながら説明し,薬の処方や次回の再来予定についても整え,患者さんとの一応の信頼関係が構築され納得されたのではないかという期待をこちらが抱いた瞬間,改めてこの一言,「原因は…」を切り出されるのである.それでは一体,何を説明してきたのかと暗澹たる気分になるのであるが,先ほどの説明ではわかりにくかったのではないかと改めて言い回しを変えたり,より詳しく苔癬化病変の成因に触れたりして対処していた.後に,このような患者さんは大都市の比較的郊外,いわゆるドーナツ化現象といわれるニュータウンに多いように感じ,後輩とともに“ニュータウンシンドローム”などと名付けていた.
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