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臨床実習で回ってくる医学部5年生に志望の科を尋ねると,たいていの学生は「全部回ってからゆっくり考えたいと思っています.」と回答する.なかには「入学前から○○科(だいたい精神科もしくは脳外科)に決めています.」という心意気のある学生もいて感心させられる.「皮膚科も面白いですよね.」と皮膚科に興味をもってくれる学生を担当したらラッキーだ.皮膚科説明会と称して会計係に軍資金をせびり,繁華街に繰り出すことができるからである.しかし,5年生の時点で皮膚科志望などという殊勝な学生がそうそういるはずもなく,飲み会を開催できるのは年1~2回が限界である.数年後,彼らが皮膚科に入局し,地道な活動が実を結ぶことを願っている.
私も医学部5年生の頃は,当然進路など全く決まっていなかったが,皮膚科の臨床実習で進路を決めた.実習で私は,重症成人型アトピー性皮膚炎の20代後半の女性Aさんを担当した.Aさんは幼少時にアトピーを発症し,成人になっても寛解せず急性増悪するたびに入院を繰り返していた.実は私も同様に幼少時にアトピーを発症した.近所の小児科で処方されたリンデロンVG®軟膏をたまに外用し,薬がなくなると放置.増悪してどうしようもなくなってから薬をとりにいくという,典型的なダメアトピー患者であった.ゆえにコントロールが良いわけもなく,中学校時代には膝窩,肘窩に苔癬病変が常に存在していた.体育の時間,半袖半ズボンになると,そのガビガビした皮膚が周囲にさらされるわけだが,多感な中学生には格好のからかいの的になるわけで,同級生から「田中君,気持ち悪い,汚い」とか言われたこともあった.今考えるといじめに近い状態だったかもしれない(きちんと治療をしない自分が悪いのだが).しかし,高校生になるとそんなことを言う奴もいなくなり,大学進学する頃にはアトピーは自然に軽快してしまった.
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