連載 新米マネジャー時代のここだけの話・第3回
きっかけは個性を打ち出すことだった
那須 祐子
1
1マーノ訪問看護ステーション
pp.318-321
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134170450300040318
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私が看護学生だった頃は「訪問看護」という言葉すらなかった時代だ。看護学校では、いかに患者さんのことを優先して考えるかを教えられた。ただ、実習のときに「この患者さんが退院したらどういう生活を送るのだろう」と思うことはあったが、院内の病棟カンファレンスでそのような話題がのぼることはあまりなかったように記憶している。
実習では乳がんの女性を受け持った。おしゃれな人だった。片方の乳房を全摘され、落ち込んでいた。何かできないかと思い、病棟内で資料を探してみたが役立ちそうなものは見当たらない。今みたいにインターネットはない時代である。彼女の術後用の下着を求め、自宅の固定電話から下着会社に問い合わせた。数は少なかったが、取り扱い店舗を一覧表に手書きでまとめ、女性が退院する日に渡した。女性は喜んでくれたが、さらに喜んだのが実習担当の先生だった。すごく褒めてくれ、「この子ったら業者にまで電話したんですって」とあちこちで話していた。普通のことと思ってやったことだが、振り返れば、私の訪問看護につながる原点だったようにも感じる。

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