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あとがき
川島 眞
pp.940
発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412101800
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東京医大病理のご出身である若新多汪先生(珍しいお名前だが,わかしん かずひろ先生と読む)からお手紙を頂戴した.内容は,「PAS染色」を学会発表などで“パス染色”と呼ぶのは不適切であり,せめて“ピー・エイ・エス染色”と呼ぶべきと考えるので,注意を喚起してほしいとのことであった.私が日皮会の理事の立場にあり,学会などでのこれまでの口うるさい発言の数々を高く評価?されてのご依頼と理解し,また日頃,自分自身でも気になっていたことでもあり,ここに記したい.
若新先生は,PAS染色=per-iodic acid Shiff(シッフ氏の過ヨウ素酸)染色であり,paraamino salicylic acid(パス=抗結核薬)とは明確に区別すべきだとのご意見である.まさにその通りで,われわれが皮膚科医になった昭和50年代は,確かに学会でも医局カンファレンスでも“ピー・エイ・エス染色”と呼んでいた記憶がある.いつの間にか,意味を考えずに語呂のよい“パス染色”に変わってしまったようである.同様な術語の間違いはしばしば見聞きする.これは,現在若き皮膚科医の教育的立場にいるわれわれに,大いに責任がある.確かに30年前に比較すると皮膚科学は目覚ましい発展を遂げ,さまざまな事実が明らかになってきているが,新事実のきらびやかさに目を奪われるあまりに,足元の基本がおろそかになりつつあるのかも知れない.新旧取り混ぜて教育してゆくことの大切さを,あらためて教えていただいたお手紙であった.
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