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あとがき
川島 眞
pp.390
発行日 2007年4月1日
Published Date 2007/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412101607
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“Conflict of interest”,「利益相反」という言葉をご存知であろうか?本誌の編集会議で最近論議されている問題である.欧米の医学雑誌をみていて気付くことは,薬剤などの治験論文の最後に,著者がその薬剤の開発会社のみならず,どこの会社から研究費の支援を受けているか,メディカルアドバイザーとしての報酬をもらっているかなど,詳細に明示している点である.治験論文の内容を評価する上では,利害関係を明らかにすることが必要という考えに基づくものであるが,どうもすんなりとは受け入れ難い.治験論文の質は,そのプロトコルの妥当性,評価法の客観性,結果の正確な解釈から判断するものであり,治験の成績そのものは報酬次第で左右できるものではない.邦文の雑誌で「利益相反」について明示することを厳格に義務付けたものはまだないが,情報公開の世の流れからはその方向に向かう可能性はある.しかし,タミフル(R)に関する異常行動の研究班班長が販売会社から教室への正当な研究費をもらっていただけで,説明のための記者会見まで開かなければならないのが本邦の現状である.他人の懐具合をのぞくような三流週刊誌の悪趣味に終わらない情報公開として,「利益相反」が読者の目に正しく映るような時代にはまだ至っていないと感ずるがいかがであろうか.
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