Derm. 2004
ヘリコバクター・ピロリは皮膚科医にとっても興味津々?
櫻根 幹久
1
1和歌山県立医科大学皮膚科
pp.166
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100689
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皮膚科医の私が,ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という菌に関わって,かれこれ7年が過ぎようとしているが,いまだ迷宮(前教授の松中成浩先生と古川福実先生にそのややこしい迷路を授かった)に入ったまま,なかなか光がさしてこない.もしかしたら,出口はないのかもしれない.もしそうなら,出口の扉がないのだと知りたい.迷って,諦めようとするとどこからか聞こえてくる.何人かの患者さんから,感謝された言葉がどうしても頭から離れない.『胃内視鏡のおかげで早期胃癌がみつかったよ.内科にいくきっかけをつくっていただきありがとう』,『先生,除菌後,皮膚もよくなってきたよ』と手を握られた.やはり医者として患者の笑顔は,心がなごむ.
ピロリ菌は,胃癌のハイリスク群と考えられているが,この菌が胃癌発生のすべてを規定しているわけではなく,日本に約6000万人いると言われるピロリ菌感染者の危険因子を明らかにしなければならず,皮膚疾患が因子として関連ありかどうか疑問がでた.私達は,内科と協力して,50歳以上の皮膚そう痒症,多形慢性痒疹など全身にそう痒を有する皮膚疾患で,特異H.pylori-IgGが陽性者に同意を得て,胃内視鏡をおこなった.結果,102人中5人(4.9%)に早期胃癌がみつかった.これは,一般的に行われている検診と比べるとかなり高い率になる.そうなると,皮膚疾患と消化器疾患がピロリ菌となんらかのつながりがあるのかと疑ってみたくなる.今のところ,答えは,『わかりません』である.
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