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私は免疫・アレルギーに関する皮膚疾患の病態の解明と治療への応用を目指して皮膚科に入局し,臨床と研究の両立を目指している.扱うべき疾患も多いし,自分としては誇りをもってやってきているつもりであるが,他科の医師から皮膚科をみると,「結局,治療は軟膏中心だから簡単なのでは?」と思われることが多いようだ.そう考えてみると,確かに皮膚科は病名が多いわりにステロイド軟膏中心の治療であり,発症機序に基づく疾患特異的な治療はあまりない.プロトピック軟膏も免疫抑制剤なので,やはり同じことがいえる.どうしてこのような現状が続いているのかを勝手に推測してみると,皮膚科では疾患の多くがステロイドの有効な炎症性であり,患者さんがそれなりに満足してくれるため,よりよい治療法への探究心や皮膚科医自身の危機感が欠けてきたためではないかと思う.そこには,正しい診断がつかなくてもステロイドで治りそう,と甘い考えが起こり,診断すらもおろそかにさせてしまう危険性すらも孕んでいる.
少し前になるが,京大の先々代教授である太藤重夫先生とお話させていただく機会があった.そのときに,現代の皮膚科学は科学技術の発展とともに,以前では考えられなかったような事実が明らかにされてきており,素晴らしいことだ,とおっしゃられていた.確かに水疱症や膠原病などでは検査手技の進歩のおかげで診断が容易になった.ところが同時に,検査に頼りがちで皮膚や組織をしっかり見つめ,その疾患は何が原因で,どうすれば根本的に治せるかを考えるプロセスが欠けてきている気がする.もしも今,好酸球性膿疱性毛包炎(太藤病)が見つかっていなかったとして,自分がそれをみても,その病態を正しく認識できないのではないかと思える.結局,自分は医学進歩の上に安住させてもらっているだけで,皮膚科医としての「目」に磨きはかかっていないのかもしれない.
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