特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
6.高齢者の嚥下障害
①高齢者嚥下障害の病態
進 武幹
1
,
津田 邦良
1
1佐賀医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.102-106
発行日 1998年4月30日
Published Date 1998/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902705
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はじめに
嚥下運動を演出する神経・筋機構は極めて複雑であり,特に咽頭期嚥下(咽頭から食道への送り込み運動)は脳幹(延髄)の嚥下中枢を中心とした中枢神経系を含めた反射系が主役をなす。このような観点から考察すると,高齢者では加齢による中枢および末梢神経系の機能低下が想像され,加えて老年期に多発する脳血管障害や変性疾患による中枢および末梢神経障害が,嚥下障害の原因となり得る。
高齢者の年齢の下限を何歳にするか定かではないが,加齢により生理機能が低下することは事実である。嚥下障害の病態を青壮年者のそれと明確に区別することはできないが,老年期になると嚥下困難を訴える患者に精密検査をすると,自覚症状はないが軽症の脳血管障害や変性疾患の初期などの器質的疾患がみつかり,これに起因する嚥下障害が診断されることが多い。
本稿では高齢者に発症する主として咽頭期嚥下の障害の病態を中心に解説する。
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