特集 小児の人工内耳
4.人工内耳による構音獲得
河野 淳
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.768-775
発行日 2002年10月20日
Published Date 2002/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902626
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
ヒトにおける音声獲得は脳の成長に伴うもので,通常1〜12歳頃になされ(図1),それを含めた言語行動はヒトのspecies specific (生物種特異性の行動)1)であり,ヒトのみに固有の準備状態(readimess)の基盤があって初めて起こるものである。音声獲得を考える場合に重要なことは,敏感期(most sensitivity period)や臨界期(criticalperiod)が存在するので,適切な時期に刷り込み(imprinting)が必要不可欠であることである。
人工内耳は高度難聴者に対しての治療法として確立されたもので,耳鼻咽喉科医にとって日常診療の中で一般化してきたといえる。現在では,単に音声を聞き取らせるという聴覚補償のみではなく,特に先天性の高度難聴者や言語習得前の早期失聴小児では,音声言語を獲得させる道具でもある。一般に聴覚補償ができない限り,意味ある言語音を発声することはできない。構音器官を用いて語音を産生する過程を「構音」といい,言語的情報としては韻律的特徴(prosodic feature)・超分節的特徴(supra-segmental)に対して,音韻的特徴(phonemic feature)・分節的特徴(segmentalfeature)として論じられる。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.