特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
各論
1.聴力とめまい 1)人工内耳―成人
河野 淳
1
,
片岡 智子
1
,
小野 智子
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科
pp.53-58
発行日 2007年4月30日
Published Date 2007/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101081
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Ⅰ はじめに
人工内耳は治療の対象とならない難聴者の聴覚補償を行うツールであり,内耳性の高度難聴者および聾患者への治療法としてすでに確立された医療である。一般に軽度難聴から高度難聴まで,まず補聴器で聴覚補償を試み,高度難聴や聾患者で補聴器でも十分な聞き取りができない場合に人工内耳の適応となる1,2)。
リハビテーション(re-habilitation)とは『もともと備わっていた能力や機能,さらに権利を回復させること』である。この言葉とは別にハビリテーション(habilitation)という言葉があるが,これは『もとから備わっていない能力や機能,さらに権利を習得させること』であり,先天性高度難聴者が人工内耳によって聴能と言語能を習得する小児に当てはまる言葉である。先天性高度難聴者の場合には聴覚・言語能力を獲得する敏感期(most sensitivity period:一般に1~2歳頃から遅くても5~6歳まで)があるため,この時期にある程度の聴覚刺激が行われていない場合,通常人工内耳の適応とならない。もちろん先天性高度難聴者で成人になって人工内耳埋め込み術を行う場合がないわけではないが,その敏感期を大幅にすぎた成人における人工内耳によるハビリテーションを行う場合は特殊な状況といえる。ここでは,対象者となる成人は,ひとたび言語を獲得した後に失聴した中途失聴者(言語習得後高度難聴者)に限定し,人工内耳埋め込み術前後のリハビリテーションについて述べることとする。
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