特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
耳
11.聴神経腫瘍手術におけるリスクマネージメント
神崎 仁
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.51-55
発行日 2002年4月30日
Published Date 2002/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902529
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はじめに
本誌では既に1969年に「耳鼻咽喉科手術の危険度」(耳鼻咽喉科41巻10号)という特集号が企画されている。この特集号は筆者が留学していたミュンヘン大学のヘルマン教授の著書に触発されて企画されたものであると序文に述べられている。当時はもちろんリスクマネージメントなどという言葉はなかったが,ヘルマン教授の著書は永年の経験に基づいて医療の質を念頭におき書かれたものである。この特集号にも聴神経腫瘍手術は取り上げられていないことでもわかるように,この手術は本邦ではようやく近年一部の耳鼻咽喉科医によって行われるようになったものである。この手術は,正に危険度については耳科手術の見本のようなものである。
ここでいうリスクマネージメントについては,「医療の質を改善するためにどのように計画を立て多くのプロセスをチェックし,各プロセスでの変化をどのように確認しその変化に対応していくか」という意味に解釈している。聴神経腫瘍(以下,ANと略)の手術死亡率,後遺症の発生率は近年飛躍的に減少している。しかし,腫瘍と脳神経,血管,脳との関係は症例により多様であることに加えて,術者の経験にも影響されるため,死亡率や後遺症は20世紀後半より著しく減少しているがゼロにはなりにくい点が問題である。この間題を解決するためには,①医師の本疾患の早期診断に対する関心を高め小腫瘍のうちに診断すること,②手術を含めた対応とその得失を説明し,患者の自己決定権を尊重すること,③医師の技術とQOLに対する判断力を向上させることである。
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