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I.はじめに
聴神経腫瘍の早期診断において,耳鼻咽喉科医の果す役割りの大きいことは,すでに多くの論文で指摘され,本邦でも耳鼻咽喉科医が,独自に主体的に診断を下し,手術を行なう症例が増えてきている。しかし中頭蓋窩経由手術腫瘍や経迷路手術の適応となる内耳道に限局せる腫瘍(0期腫瘍またはear tumor)あるいは内耳道口より後頭蓋窩に腫瘍が発育しているが,脳幹圧迫症状のないもの(Ⅰ期の腫瘍)の診断の経験はそれほど多いものでない。
このような早期の聴神経腫瘍の病像は,従来脳外科などでいわれたようなものとはことなるであろうという推定はすでにわれわれが報告した7)。
すなわち腫瘍が早期であればあるほど,所見は第八神経に限定され,しかも非定型的所見を呈し,最終的の決め手はmyelography(後頭蓋窩造影)によらなければならないと思われる。そこでわれわれは早期の診断の基準として次の自覚的,他覚的症状を示した。
1.自覚症状として
1)一側の耳鳴および一側の進行性の難聴。
2)平衡障害。
2.他覚所見として
1)一側の後迷路性聴力障害。
2)同側の前庭温度刺激反応の低下ないし廃絶。
3)X線所見による内耳道拡大の所見およびmyelography(後頭蓋窩造影)による腫瘍の証明。特にmyelographyは腫瘍の存在と大きさを確定する決め手となる。
以上の基準は果して有効であろうか。
最近比較的早期の腫瘍(ear tumorの状態に近い腫瘍)の診断と手術の経験をもち,以上の基準が日常的に有効であることが判つたので,ここに報告するとともに,従来報告された早期発見の腫瘍症例を分析し,早期診断のあり方について検討を加え,あらたに診断の目やすともいうべきものを考えたので,諸氏のご批判を得たいと考えた。
A surgical removal of early acoustic neurinoma through translabyrinthine approach is reported. The patient showed symptoms of retrocochlear deafness and decreased vestibular function on the affected side. No other symptom was recognized. An ordinary X-ray failed to reveal any sign of enlargement of the internal aural canal. With the aid of 2.0 cc myodil a shadow was recognized in the posterior occipital fossa. The tumor was removed through translabyrinthine approach.
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