特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
耳
3.鼓膜切開・中耳換気チューブ留置術
青木 和博
1
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学講座
pp.15-19
発行日 2002年4月30日
Published Date 2002/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902521
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はじめに
一般的に鼓膜切開処置は,急性中耳炎に伴う耳痛などを主訴とした中耳の急性化膿性病態を改善する目的で行われるが,最近では滲出性中耳炎に代表される非穿孔性中耳貯留液性中耳炎の病態改善を目的にして行われる例が増加している。非穿孔性中耳炎は中耳腔内の炎症病態に伴って正常な中耳含気腔を維持することが困難な症例で,原因として耳管の換気・排泄障害や,中耳腔を被覆している粘膜障害に伴う粘液産生細胞の増生,血管の透過性亢進,粘膜内血流量の変化などが相互に関与し,中耳貯留液性の病態を形成すると考えられる。このような病態を改善するためには,鼓膜切開で一時的に中耳腔内の貯留液を排泄し,耳管機能や中耳粘膜機能の改善を促して腔の再形成を期待するが,一時的な処置のみで改善しない例では,中耳換気チューブを留置して長期的に耳管機能や中耳粘膜機能の改善を図り,正常な中耳含気腔形成を促進する必要がある。鼓膜切開や中耳換気チューブ留置は,切開部位の鼓膜裏面に重要構造物がないことを十分に確認してから行うべきで,合併症を防ぐうえでも中耳腔内の解剖学的位置関係を理解することが最も重要な点である。
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