鏡下咡語
漢字雑感
太田 文彦
1
1近畿大学
pp.768-769
発行日 2001年10月20日
Published Date 2001/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902435
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漢字は表意文字であり,その偏と旁は意味を示す意符と音を示す音符から成り,意味とともに発音も分かるようになっている。漢字のルーツは4,5千年前といわれ,日本に漢字が伝わったのは,『古事記』に「また百済国に,若し賢人あらば貢れと仰せたまふ。かれ命を受けて貢れる人,名は和邇吉師,即ち論語十巻,千字文一巻,井せて十一巻を,この人に付けて貢りき」とあるのが,最初の記録である。『日本書記』にも,応神天皇の十六年の項に「春二月,王仁来けり。則ち太子菟道稚郎子師とし,諸の典籍を王仁に習ひ,通達らずといふこと莫し。故れ所謂王仁は是れ書首等の始祖なり」とある。
欽明天皇の御代,仏教が伝来してから漢字は広く用いられるようになった。われわれの祖先の大変な努力で漢字は日本で独特の発達を遂げて,音と訓という二重の使い方ができ上がった。それだけに漢字の使い方は複雑で難しいとされ,さらに書体に楷書,草書,行書,隷書などがあって,益々複雑となった。平安時代には漢字から平仮名,片仮名が生まれ,さらに仮名まじり文というユニークな文体を造り上げた。これが日本人の表現力を豊かにし,読む速さを増したことも確かである。
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