特集 全身疾患と耳鼻咽喉科
Ⅱ.神経症状および神経疾患
6.心因性疾患と耳鼻咽喉科
矢野 純
1
1日本赤十字社医療センター耳鼻咽喉科
pp.77-83
発行日 2000年4月30日
Published Date 2000/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902154
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
耳鼻咽喉科の臨床の場では,心因性めまい,心因性発声障害,心因性難聴など心因性と診断される症状がある。訴えに相応する他覚的所見が見出せない場合,心理的なショックが引き金になって発現した症状などの場合である。
耳鼻咽喉科で心因性と診断される症状は2つに分けられる。1つは,精神状態の変化に伴う自律神経系を含む身体の変化で説明できる。例えば,不安に際しては呼吸数の上昇や頻脈が伴い,息苦しさやめまい感,動悸として自覚される。精神緊張には,筋肉の過緊張を伴い筋収縮性頭痛や肩・首の筋のこりとなる。これらの症状は,いわゆる不定愁訴の範囲に入ることが多く(表1),様々な精神科疾患の症状として出現する1)。もう1つは,心理的葛藤が神経疾患様の身体症状として表現される場合である。転換性障害の症状としての心因性難聴や心因性失声症が相当する。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.