トピックス ことばの障害と耳鼻咽喉科
4.聾唖と耳鼻咽喉科
田中 美郷
1
1帝京大学文学部教育学科・医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.841-847
発行日 1999年11月20日
Published Date 1999/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902069
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はじめに
LuchsingerおよびArnoldの“Handbuch der Stimm-und Sprachheilkunde”第3版第2巻(1970)1)によると,聾唖(Taubstummheit)とは先天性または乳幼児期に生じた後天性聾(Taub-heit)による言語そう失(Sprachlosigheit)であり,聾(Taubheit)とは聴力の損失が著しく,耳を介してのコミュニケーションが全く不能な状態である。Nicolosiら2)の“Terminology of Com-munication Disorders”(1978)では,deaf muteとは高度難聴(severe hearing loss)があって聞くことも話すこともできない人を指す古風な用語であり,deafnessとは聞く能力のそう失であって聴力の損失程度では示さない,とある。わが国では100dB以上の著しく高度な難聴を聾とする見解もある3)が,コンセンサンスが得られているわけではない。聾とか聾唖という言葉がaudiologyの発達以前から存在したことを考えれば,数量的表現をもって表現し難いことは当然であろう。しかし,われわれは今日「ろうあ(聾唖)」という言葉が上述のような医学用語としてではなく,別の概念をもって社会的に使われていることに注目しなければならない。この問題は聾教育の歴史や聾者の社会と深く関係する。
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