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I.緒言
聾唖の教育に耳科学者が積極的に参画すべき事は既に古くから強調されている所であり,又事実聾教育の歴史を振り返つて見てもその分野に於て耳科学者の残した足跡が極めて大きい事は周知の所である。勿論聾教育に於て耳科学者が占めている役割の最大の問題は残聴,特に残聴と教育方法との関連の問題であるという事が出来よう。Bezoldが連続音叉を用いて聾唖の残聴を測定し,その有無性状によつて教育方法を変えるべき事を主張した事は有名であるが,近年に於ても例えばGuilder and HopkinsやNash,Püttmann等の如く,オーヂオグラムに基づいて聾教育に於ける残聴の利用の問題,特に残聴の有無や多少によつて教育の方法を変えるべき事を述べている人は少くない。蓋しこの問題が古今を通じて聾教育の最も大きい関心事の一つであつた事は論をまたない所であろう。特に近年電気補聴器の性能の向上,普及に伴つて,残聴の利用が容易になりつつある事実は更にこの問題の重要性を増大するものという事が出来る。
さて翻つて聾唖者の残聴そのものに関する研究をとり上げて見ると,既に半世紀余の長い年月にわたつて凡そ枚挙に暇のない程の多くの報告がなされている。然し乍らそれにも拘らず残聴に関する各種の報告は必ずしも報告者間に一致した成績が得られない事が多い。例えば第1図は残聴の出現率であるが,各報告者間にかなり大きな相異のある事が認められる。これにはいろいろな原因が有るであろうが,その最も大きいものは残聴の定義の不確実性,残聴に対する考え方の相異であろうと思われる。この事は,先述のように,残聴の状態が聾教育の最も大きい問題としてとり上げられる事を考えれば,むしろ奇異な事であると言わねばならない。残聴の実態を調査する事が重大である事は論をまたないが,それはしかし確固たる基盤に立つた,そして普偏的な意味のある調査であり報告である事が必要なのである。
One hundred ninteen students of HirosakiSchool for Deaf were examined with high potency audiometer. The following 4 points are discovered by this proceedure :
(1) A definition and classification of residual hearing should be established.
(2) Propositions of items in (1) are made.
(3) Residual hearing should be considered more in actual amounts.
(4) Residual hearing should be constantly considered as the means of connection which exist in the process of education through the ear.
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