トピックス ベル麻痺の診断と治療—最近の知見
2.ベル麻痺の発症と単純ヘルペスウイルス感染
古田 康
1
,
高須 毅
1
,
鈴木 清護
1
1北海道大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.315-320
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901798
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はじめに
特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の病因については,血液循環不全やウイルス感染などが推測されてきた。中でもウイルス感染は,最も疑わしい原因の1つである。その理由としては,ベル麻痺の前駆症状として感冒様症状を伴うことがあること,また水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により,末梢性顔面神経麻痺(Ramsay Hunt症候群)が発症することなどがあげられる。実際に,初診時にベル麻痺と診断された症例中には疱疹を伴わないVZV再活性化が血清学的検査1)やpolymerase chain reaction(PCR)検査2)で明らかになることもあり,これらの症例はzoster sine herpeteと診断されるべきであり,ベル麻痺とは区別しなければならない。さらに,最近の分子生物学的研究の進歩により,単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus type1:HSV−1)の再活性化がベル麻痺の1つの病因であることが明らかになってきた3,4)。本稿では,HSV感染と顔面神経麻痺に関する現在までの研究の背景を述べるとともに,筆者らが行ってきた研究を紹介する。
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