トピックス ベル麻痺の診断と治療—最近の知見
1.ベル麻痺の成因に関する最近の知見
柳原 尚明
1,2
1鷹の子病院耳鼻咽喉科
2愛媛大学
pp.307-313
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901797
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はじめに
1830年,Sir Charles Bellが顔面の運動は第七脳神経により支配されること,ベル麻痺の1症例を初めて記載したことから,顔面神経麻痺は原因のいかんを問わずベル麻痺と総称されていた。しかし今世紀に入り,顔面神経麻痺が外傷,腫瘍,中耳の炎症,ウイルス感染,先天性などの様々の原因で起こることが明らかにされ,それぞれ独立の疾患単位として記載されるようになった。一方,顔面神経麻痺の過半数を占める急性,特発性の麻痺は,リウマチ性麻痺,寒冷麻痺,虚血性麻痺などと呼ばれていたが,1940年頃から,この原因不明の急性,特発性麻痺に限ってベル麻痺と呼ぶことが世界的に合意され現在に至っている。したがって,ベル麻痺の診断は除外診断であり,原因が明らかになればベル麻痺という病名は自然に消滅することになる。
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