目でみる耳鼻咽喉科
下咽頭より生じた巨大脂肪腫の1症例
坂本 菊男
1
,
森 一功
1
,
平野 実
1
,
中島 格
1
1久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.902-903
発行日 1997年12月20日
Published Date 1997/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901690
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下咽頭の良性腫瘍は比較的稀であり,なかでも脂肪腫の報告は少ない。今回われわれは,下咽頭に発生した巨大な脂肪腫の1例を経験したので報告する。
症例は60歳,男性。咽頭違和感を主訴に某医を受診し,ラリンゴマイクロ下に生検を施行後,下咽頭脂肪腫の診断で当科に紹介された。入院時,下咽頭の左梨状陥凹に白色調の表面平滑な腫瘍を認め,左被裂軟骨の部分にも同様の腫瘍を認めた(図1a)。上部消化管造影で左梨状陥凹部分に茎をもつ下部食道内腔まで垂れ下がった長さ約30cmの境界明瞭,辺縁平滑な隆起性病変を認めた。食道は全体的に著明に拡張していた(図2a,b)。CT検査で,下咽頭下縁より食道にかけて内部低吸収像,造影でエンハンスされない病変(矢印)を認めた。内部組織のCT値は−98.2で脂肪成分と思われた(図3)。MRIでは,下咽頭下縁から食道下端にまで連なるT1強調像で高信号,STIRで低信号を呈する巨大占拠性病変(T)を認めた(図4)。内視鏡検査で,表面平滑で色調は桃色の腫瘍は左下咽頭より発生し食道内へ続き,その先端は分葉状で門歯より40cmに達していた(図1b)。
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