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はじめに
聴器癌の治療は手術的に全摘することが基本であり,放射線治療や化学療法が補助的に行われる1〜5)。手術的に摘出した後の欠損部位の再建には,その範囲の大きさに応じて側頭筋や胸鎖乳突筋などの有茎筋弁,筋皮弁,腹直筋などの遊離皮弁を用いて行うことになる。
聴器癌が高齢者に生じた場合,患者の全身状態などのほかに再建上の問題(侵襲の大きさ,動脈硬化のために血管吻合不全から遊離皮弁壊死をきたす可能性)から手術適応の決定をためらうことがありうる。また本人,家族ともに高齢であるがゆえに手術を受けることに消極的になることもあろう。しかしながら,手術治療なしに腫瘍を制御することは困難であり,腫瘍の進行に伴い出現する疼痛,出血,感染などを考えると,患者のQOLの点からも手術的に根治をめざすことが第一選択と考えられる。手術に際してはより侵襲が少なく,壊死などの危険性の少ない再建方法を用つることが重要である。今回われわれは,発見から1年間経過を観察されていた90歳の外耳道癌症例に対し,外耳道・耳介全摘,耳下腺浅葉切除,上頸部郭清術を行い,欠損部位を有茎側頭筋弁と植皮を用いて再建し,QOLの面から良好な結果を得たのでここに報告する。
A 90-year-old woman presented with bleeding from a fungating mass of the left external auditory canal invading the parotid gland.
Histopathological finding was squamous cell car-cinoma. She underwent surgical resection of the tumor with superficial parotid lobectomy and left upper neck dissection. The defect was successfully reconstructed with temporal muscle flap and skin grafting.
She received 40 Gy radiotherapy postoperatively, and there was no evidence of local recurrence or metastasis one year later.
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