鏡下咡語
臨床医学の将来について気になること
金子 敏郎
1
1千葉大学
pp.1056-1057
発行日 1995年11月20日
Published Date 1995/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901267
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定年退職をしてから既に1年が経過し,新しい生活様式にも次第に馴れてきたところである。特別に茶道を行っているわけではないが,退職後は「和敬清寂」を旨として過ごして行きたいと願っている。しかし清寂を維持することは沈黙を守ることではないと考え,ここで臨床医学の将来について,気になることを述べさせて頂くことにした。ただこれから申し上げることも,外から見れば要らぬお世話といわれるかも知れないし,あるいは単なる杞憂に過ぎないことであるかも知れない。
クロード・ベルナールは『実験医学序説』の冒頭で「医学がその起源以来提出してきた問題は,健康を保ち,病気をなおすことである」と述べている(三浦岱栄訳・岩波文庫)。医の倫理が叫ばれ,インフォームド・コンセントなどの問題が社会の大きな関心を惹いている現在においても,医学の究極の目的はなおクロード・ベルナールの考えと符合するものと思われる。
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