鏡下咡語
耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学とその医療の将来を想う―持続可能な発展に向けて
金子 敏郎
1
1千葉大学
pp.998-1000
発行日 2005年12月20日
Published Date 2005/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100230
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I.はじめに
少子化による人口減少の結果,患者数が減少するなかで,医師,特に歯科医師の過剰によって専門分野間の学術上,医療上の衝突と抗争が今後,激しくなることが予測される。
一方,医療財源の逼迫が医療制度の抜本改革を迫り,最近では医療に商業主義を導入すべきとする政策提言もなされつつある。さらに特定機能病院や200床以上の病院で既に実施されている保険診療上の外来処置の包括化を診療所レベルにも適合させようとする動きもある。入院患者の治療を主体とする病院では,検査や手術などの治療面で専門医としての能力を発揮し得る場面があるが,診療所に適合させるとなるとさまざまな問題が浮上してくる。
現況では,耳鼻咽喉科を標榜する診療所の大部分の医師は専門医であるから,包括化されると専門医でなければ実施できない難易度の高い医療行為を行っても正当に評価されない事態が発生し,専門医制度の根幹を揺るがすことになる。進展いかんによっては,耳鼻咽喉科学の存亡の機を迎える可能性も否定し得ない。また,適当な“縛り”をつけないまま包括化を行うと,他科の医師が容易に耳鼻咽喉科処置を行いやすくし,医療の質の面で患者に負の効果を与えることになる。
以上のような最近の動向を前にするとき,境界領域の多い耳鼻咽喉科学とその医療には,持続可能性(sustainability)を巡る危機が迫りつつあると考えざるを得ない。
本稿がわれわれの将来を考えるための引き金となることを願う次第である。
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