巻頭言
日本の将来と精神医学
森 則夫
1
1浜松医科大学精神科神経科
pp.1028-1029
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904624
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今年のNHK大河ドラマはおもしろい。これまでの大河ドラマと違って女々しい場面が少ない。本木雅弘もいい。苦悩する貴族の雰囲気がよく出ている。司馬遼太郎の慶喜像とおおよそ同じである。最近,このテレビドラマが縁で,高松宮妃殿下が月刊誌のインタビューに応じられた。妃殿下は慶喜公の孫娘である。インタビューの中で,妃殿下が皇室の伝統に触れているくだりがいくつかある。まず,言葉遣いが違うらしい。両陛下へのご挨拶は「こんにちは」や「ご機嫌よう」ではなく,「こんにちはまことにお暑いことでございます」と時候の挨拶をしてから,「お揃いあそばしましてご機嫌ようならっしゃいまして」と申し上げるのだそうである。賢所は天照大神を祀る神聖な場所で,そこでは年4回の御神楽があるという。この御神楽は夜中まで続くから,その間,両陛下はもちろん,皇族の方々も起きていなければならないそうである。「ご終了」の電話が宮内庁から入ってから,休まれるという。次第に簡素化されているというが,伝統の継承とはまことに骨の折れることである。そして,日本の伝統とはかたちの美しさだとつくづく思う。和歌も能もひたすら研ぎ澄まされたかたちを追い続けている。
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