トピックス 耳鼻咽喉科領域の真菌症—診断と治療
3.鼻・副鼻腔の真菌症
村井 信之
1
,
馬場 廣太郎
2
,
清水 宏明
2
,
深美 悟
2
1上都賀総合病院耳鼻咽喉科
2獨協医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.786-791
発行日 1994年9月20日
Published Date 1994/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900981
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
遠い昔,人類が発生する前より,真菌は存在した。動植物がその生を終わると,土に帰すために,細菌では分解できない植物の繊維質や,動物の毛などの角質層を真菌が分解してくれていたのをご存知でしょうか。まるで役に立ちそうもない真菌も自然界の中ではちゃんとした役割があるのである。
さて,近年抗生物質の進歩や,癌の治療法の発展など,医学の進歩とともに真菌症は医学の多くの分野でますます注目を浴びているが,耳鼻咽喉科における真菌症は,他の細菌感染症やウイルス感染症に比べ多いものではない。およそ感染症と名のつく耳鼻咽喉科疾患の3%以下である。また致死的転帰をたどる重篤な内臓真菌症のような症状もなく,伝染性も少ないために医学的関心の低い疾患である。
しかし耳鼻咽喉科領域でも真菌症は確実に増加している疾患である。耳鼻咽喉領域の真菌症は表在性,限局性真菌症が多く,そのため真菌症としての発症原因に最も関与していると思われるものは,広域抗生剤の頻用と,副腎皮質ホルモン剤である。さらに鼻・副鼻腔では鼻中隔彎曲などの形態的な問題が加味されるのであろう。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.