鏡下咡語
六神丸異考
本庶 正一
1
1平生看護専門学校
pp.948-950
発行日 1993年11月20日
Published Date 1993/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900833
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七夕さんの翌日である。昨日から聖マリアンナ医大の竹山教授の担当で耳鼻咽喉科臨床会の学会が横浜で開催されている。港に近いホテルで朝目がさめる。良く晴れて山下公園や海がきれい。学会場で一日中暗室に閉じこめられ,早口でまくしたてる話を聞かされているには勿体ない日和。一階の食堂で朝食をとっている途中でふと気が変わる。停年退職した身軽な立場,久し振りに元町に行き何か珍しいものでもあればと思う。
10時頃ホテルを出る。横浜も元町の付近は余り人通りは多くない。両側の歩道を2,3人連れの御婦人や,見るからに親子とおぼしい2人連れが歩いている。しゃれた婦人服店と陶器屋の間にはさまって薬局がある。学会終了後に竹山教授のお世話でゴルフの会がある。いつものように外用消炎鎮痛剤サロメチールを用意しよう。店の中に入って見廻すと,「六神丸富山広貫堂」と書いた色ずつの大きなビラが目に入った。なつかしい!私ども富山生まれの感覚からすると,明治以来文明開化の先駆けを走り今や大阪市を追い越して東京都につぐ第2の大都市横浜市の,しかもオシャレの元町に越中の置き薬の広告があろうとは。思わず店の主人らしい人にたずねる。「良く売れますよ。とくに隣の中華街から買っていただいています」。さらにおどろく。中華街には本場中国の漢方生薬の店が軒を連ねているのに。
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