鏡下咡語
擬声語漫想
太田 文彦
1
1近畿大学医学部耳鼻咽喉科
pp.896-897
発行日 1991年11月20日
Published Date 1991/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900460
- 有料閲覧
- 文献概要
標準耳鳴検査法1984のなかに,擬声語による耳鳴の表現の検査がある。平凡社の大百科事典によれば,擬声語とは「物体の響く音,動物の鳴く音などを模した語。あるいは擬音語,写声語ともいう」とある。もともと物音や音声を完全に模倣することは出来ないし,またそれらは各人に一様に聞こえるものでもない。さらにその音の象徴する概念も各国民によって異なるので,用いられる擬声語も随分と違うものになっている。たとえば「コケコッコウ」と“cockadoodledoo”とを比べれば,われわれの耳には前者のほうがずっとそれらしく聞こえる。
日本人は音を擬声語で表現しようとする習性があるのか,あるいは日本語が擬声的起源の濃い言語であるのかは知らないが,日本語には擬声語が背から随分と多い。これは一つには単音節ごとに対応する文字があるという日本語の特性にもよるのだろうが,日本人が単刀直入にズバッと表現することを好むからかも知れない。風刺のきいた落首が庶民の間にもてはやされたことを考えれば,いろんな音を自分の感じたままにずばりと表現することが日本の庶民には歓迎されたのかも知れない。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.