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新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい,遂に4月7日,緊急事態宣言が出されました。ここ神戸でも頼みの綱の感染症指定医療機関が限界を迎え,大学病院も大幅に診療制限をしてコロナ対策に舵を切り始めています。嗅覚・味覚障害が感染の徴候として注目される一方,鼻処置や内視鏡検査,ネブライザー,鼻科手術,気管切開など耳鼻咽喉科の診察・手術手技はウイルス感染のリスクが高いとの報告が相次ぎ,読者の皆様も日々の診療に大きな影響を受けておられることと思います。本誌が発刊される頃,5月の陽射しと6月の雨がウイルスを駆逐してくれていることを心から願います。
さて,今月号は2か月ぶりにReview Articleを掲載しています。同じ「新型」でもこちらは「人工内耳」のお話です。第一人者の京都大学名誉教授 伊藤壽一先生(現 滋賀県立総合病院研究所)に人工内耳の歴史と今後の展望,そして,現在取り組んでおられる新型人工内耳「人工聴覚上皮(HIBIKI)」について解説していただきました。HIBIKIは従来の人工内耳と違い,体外装置や体内受信装置,電源を必要としません。わが国発の画期的な医療機器として1日も早い実用化が期待されます。今月の特集は「耳鼻咽喉・頭頸部領域の外傷性疾患」です。顔面裂傷,耳小骨連鎖離断,鼻性・耳性髄液漏,顔面神経麻痺,鼻骨骨折,眼窩壁骨折・視神経管骨折,顎・顔面骨骨折,口腔外傷,喉頭・気管外傷,頸部外傷など,突然訪れる外傷への対応について,最前線でご活躍の皆様に診断から治療まで実例を挙げて解説していただきました。原著論文も「中耳髄膜腫(伊藤論文)」「内頸動脈走行異常(川瀨論文)」「下顎骨異常運動(山本論文)」「T2N0喉頭癌に対する根治的放射線治療への化学療法の同時併用の有用性(平賀論文)」と,念頭に置いておきたい貴重な報告が揃い,大変充実した内容となりました。外出自粛で生まれた時間を,ぜひ,本号の通読にお使いください。
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