トピックス 耳音響放射
自発耳音響放射
菅澤 正
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科
pp.31-38
発行日 1990年1月20日
Published Date 1990/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900005
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はじめに
聴覚系に対する他覚的検査として,Tympano—metry,Stapedius Reflex,ABRなどの電気生理学的検査が挙げられる。現在の所,内耳特に有毛細胞機能に対する検査は蝸電図によるSP,CMの測定のみで必ずしも満足の行くものではない。近年注目を集めている耳音響放射(Otoacoustic Emission=OAE)は外有毛細胞の機板刺激一電気刺激間の双方向性変換によって生ずるとの説1)が有力であり,臨床的には内耳機能検査,さらに外有毛細胞機能検査の可能性を秘めている。また,複聴,結合音,二音抑制などの聴覚心理現象と,密接な関連2)があり,その機構解明の一助となろうう。
OAEは音刺激の存在下に出現する誘発OAEと負荷なしでも出現する自発OAE(Spontaneous OAE=SOAE)に大別される。前者は簡便に検出可能で,様々な刺激を選択できることから現在臨床応用が試みられている3〜4)。後者はその性状からOAEの具体的発生機構解明の格好のモデルと考えられる。しかし実験動物においてはその発生はきわめて稀5)のため,比較的出現し易いヒトに対して様々な負荷実験が行われているのみで,その機構解明は困難であり,現状では見解も未だ一致していない。
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