増刊号 こんなときの対応法がわかる 耳鼻咽喉科手術ガイド
Ⅴ.頸部の手術
頸動脈小体腫瘍に対する手術
志賀 清人
1
1岩手医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.268-272
発行日 2015年4月30日
Published Date 2015/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200628
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はじめに
頸動脈小体腫瘍は稀な疾患であり,病理組織学的に同じ傍神経節腫である褐色細胞腫に比べて,その実態解明は大幅に遅れている。傍神経節腫については最近の急激な研究の進展で,原因遺伝子としてSDH遺伝子ファミリーであるSDHA,SDHB,SDHC,SDHD遺伝子のほか,これまでに合計16種類の遺伝子に変異が発見されている。今後も遺伝子変異の解析が進めば,さらに多くの変異が見出される可能性があり,これだけ多くの遺伝子変異で同一の組織型の腫瘍が発生するのは,ほかに例がない。また,sporadicな腫瘍にも何らかの遺伝子変異が存在する可能性を示しており,傍神経節腫における遺伝子変異の解析は極めて重要である。また,少数ではあるが悪性例も含まれるため,発見したら摘出術を考慮すべき疾患である。
その一方で,頸動脈小体腫瘍は非常に血管に富み,また総頸動脈〜内頸動脈〜外頸動脈の周囲を取り囲むように成長することから,他の腫瘍のような感覚で手術操作を行うと多量の出血を伴ったり,頸動脈壁の損傷を引き起こして,その合併切除や再建術を必要とする危険が高い腫瘍である。われわれは,これまでの経験から術前の栄養動脈の塞栓術の必要性を確認し,放射線IVR医と連携を図ることによって,極めて少量の出血量(10mL前後)でこの腫瘍を摘出できるようになった。症例を示しながら,頸動脈小体腫瘍の手術について解説する。
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