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I.T細胞とB細胞,その名前の由来と免疫系の仕組み1)
免疫系は細胞性免疫と液性免疫の二つに大きく分けられる。細胞性免疫は遅延型皮膚反応や移植片の除去にその作用は代表される。液性免疫は抗体の産生を受け持つ。実際にはこの二つの系はお互いに作用しあって個体の免疫能を発現している。T細胞の名前の由来はthymus-derived (=thymus-processed, thymus-dependent) lymphocytesからである。すなわち胸腺から派生した,より正確には胸腺を経由したリンパ球という意味を持つ。B細胞の名前の由来は"bursa equivalent"—derived (non-thymus-processed, thymus-indepen—dent) lymphocytesからである。すなわちFabricius(ファブリキウス)嚢から派生した,またはFabri—cius嚢を経由したリンパ球という意味である。哺乳類には鳥類と違ってFabricius嚢がないため,漠然とFabricius嚢相同器官という概念が持ち出されるが,解剖学的に同定されているわけではない。すべての造血器官にその役割があると考えられている。
歴史的にみれば,免疫系に二つの大きなシステムがあることが明らかとなったのはそう古いことではない。感染防御に関係する成分として初めに考慮されたのは貪食細胞(phagocytic cells)であった。この貪食作用を増す(オプソニン効果)ものが血清中にあることが知られ,いわゆる細胞性免疫と液性免疫の二つの概念が生まれたが,細胞性免疫に関してはより正確にいうと細胞伝達性免疫(cell-mediated immunity)であり,細胞を介して初めて伝達される免疫能,すなわち移植片の除去,遅延型皮膚反応などに代表されるもので,その主体はリンパ球であることが明らかとなった。液性免疫を担うものは各種の抗体であるが,抗体産生細胞である形質細胞はリンパ球より変化移行するものであることも明らかとなった。
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