トピックス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の人工臓器
人工中耳
柳原 尚明
1
1愛媛大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.277-282
発行日 1988年4月20日
Published Date 1988/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200135
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I.植込型人工中耳開発の背景
鼓室形成術の成績は近年著しく改善し,多くの症例において中耳炎症の治癒と聴力の改善が確実に得られるようになってきた。しかし骨導聴力不良例,耳管機能不全例,アブミ骨可動性の障害例では,鼓室形成術によって聴力の改善をはかることは依然困難である。これらの問題点を克服して聴力の改善を得るためには,WullsteinのV型分類に代表される中耳伝音機構の再建理論の枠を超えた,革新的な発想による聴力改善手術を開発することが必要と考えられる。
鼓室形成術によって聴力改善が得られない場合,一般には補聴器の装用が勧められる。電子音響工学の目覚ましい進歩により補聴器の品質,性能は向上し,小型化も一段と進んできたが,現在のアナログ型補聴器の使用は必ずしも患者を満足させるものではない。患者の多くが補聴器を使用したがらない理由には以下のようなものが挙げられる。
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