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特集 耳鼻咽喉科領域のアンチエイジング
嗅覚・味覚
Anti-aging guide for olfaction and taste
近藤 健二
1
Kenji Kondo
1
1東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学教室
pp.552-558
発行日 2012年7月20日
Published Date 2012/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102236
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Ⅰ はじめに
視覚,聴覚というヒト社会のコミュニケーションで重要な感覚が障害された場合はそのハンディキャップが明らかで,実際身体障害者の等級もついており,周囲の人にも容易に問題点が理解される。一方,嗅覚や味覚の障害には身体障害者認定はなく,またこれらの感覚が障害されるといったいどのような問題が生じるのか,健常人には想像することがなかなか難しい。したがって,本人が感覚障害を抱えているということが周囲の人に認知されにくく,これがさらに患者の落胆や悩みを深くしている場合もある。実際には表に掲げるようにこれらの問題で医療機関を訪れる患者はさまざまな悩みを抱えている(表1)。項目を眺めると,嗅覚・味覚障害はQOLにかかわる,ヒトとして健康で文化的な生活を送るために必要な感覚と位置づけることができよう。
嗅覚も味覚も加齢とともに閾値上昇が起こり,また医療機関を受診する患者の数が増える。日本の急速な高齢化と相まって,今後嗅覚・味覚障害の患者は増加することが予想されるが,一方身体の活動性が低下した高齢の方は食事の生活に占めるウェイトが大きいため,嗅覚,味覚の重要性がむしろ増しており,その障害は深刻な栄養障害やQOLの低下を起こしうる。したがって,老後の生活の質を高めるというアンチエイジング医学の目標を達成するためには嗅覚・味覚障害の克服は重要な課題の1つであるといえよう。
残念ながら嗅覚・味覚の加齢変化は未開拓の研究分野であり,得られている知見も限定的であるが,本稿ではその中から嗅覚系,味覚系の生理と加齢変化,そして加齢変化を予防するための対策について概説する。
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