特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅷ.囊胞性疾患診療NAVI
1.先天性囊胞
加瀬 康弘
1
1埼玉医科大学耳鼻咽喉科
pp.233-237
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102164
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Ⅰ 甲状舌管囊胞(正中頸囊胞)
最も多い先天性頸部囊胞で,性差はなく,70%が30歳までに発見される1)。甲状腺は胎生3週頃の発生の過程で形成される甲状舌管に沿って舌根部より下降し,本来の下頸部正中の気管前面に到達する。その後甲状舌管は退縮消失し,舌根部には舌盲孔として,痕跡を残すのみとなる。何らかの異常により甲状舌管が残存した場合,囊胞化する。したがって本囊胞の存在しうる部位は例外を除き,舌根部の舌盲孔から甲状腺までの甲状舌管が存在していた頸部正中付近に限られる。また舌骨より下方レベルに生ずることが多い1)。なお甲状腺組織そのものが本来の部位に下降せずに甲状舌管の途中に残存すると異所性甲状腺となる。甲状舌管囊胞との鑑別が必要である。
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