特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅷ.囊胞性疾患診療NAVI
2.副鼻腔囊胞
竹野 幸夫
1
,
久保田 和法
1
1広島大学大学院医歯薬総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.239-243
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102165
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Ⅰ 疾患の概説
副鼻腔は粘膜上皮で覆われる複数の含気空洞より構成されており,それぞれの副鼻腔は固有鼻腔と生理的排泄路である自然口を通して交通している。この自然口が何らかの原因(炎症,外傷,手術など)で閉塞した場合,あるいは副鼻腔根本術後の治癒過程で生じる瘢痕組織の中に粘膜上皮が残存した場合,上皮粘膜組織から産生・分泌された粘液が物理的に閉鎖された副鼻腔や瘢痕内に貯留して副鼻腔囊胞が形成される1,2)。囊胞の形成過程は一般に非常に緩徐であり,初期にはほとんど症状はない。しかしながら長期間にわたる貯留液の存在により,囊胞内の圧力は徐々に高まり,物理的に周囲組織を圧迫する。これにより骨組織の吸収プロセスが進行し,骨の菲薄化や融解が生じてくる。このように副鼻腔囊胞の発生機序は共通したものがあるが,囊胞の発生部位と周囲組織との関係によって発現症状が異なるので注意が必要である。
副鼻腔囊胞は,その成因から大きく原発性(特発性)と二次性(続発性)に分けられる。諸家の報告によると,原発性が15~16%,術後性が81~82%,外傷性が1~2%と,副鼻腔根本術を成因とする二次性(術後性)囊胞が頻度的に最も多い。また年齢的には50~60歳代に多いとされている3)。原発性(特発性)は前部篩骨洞や前頭洞に多く,上顎洞では比較的少ないとされている。特に前頭洞の排泄路である鼻前頭管は,他の副鼻腔の自然口に比べて長く狭小であるため,ひとたび副鼻腔炎などを契機とした病的変化が起こると物理的に通過障害をきたしやすい。このため前頭洞は副鼻腔各洞の中でも原発性囊胞が最も発生しやすいとされている(過去の文献では30~50%)4,5)。
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