特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅱ.難聴診療NAVI
4.薬物による聴覚障害
中川 尚志
1
1福岡大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.50-54
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102132
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Ⅰ 薬物による聴覚障害について1,2)
薬物による内耳障害はほとんどの場合,望ましくない副作用である。薬物による内耳毒性には可逆性のものと非可逆性のものがある。また,複数の薬剤の組み合わせや投与を受ける個体による感受性の差,腎障害など全身状態,難聴の有無においても薬物による内耳障害作用が増強することもある。単独作用でなく,相互作用としての障害も認識しておくべきであろう。内耳毒性をもつ薬剤では蝸牛障害が主なもの,前庭に主に症状が出るものなど障害部位の特異性がある。また全身投与の場合と局所投与の場合でも異なる。内耳障害を有する薬剤の作用機序の解析は内耳の基礎研究として,動物実験では知識の蓄積がある。しかしながら,人への投与では副作用であるために,統計になりにくく,どのくらいの頻度や濃度で発症するのか,具体的数値を挙げることは難しい。
局所投与の場合,薬剤は正円窓膜を透過して,内耳リンパに侵入する。このため,薬剤は正円窓に近い,高音域の受容を担当している基底部が先に障害される。障害が高度になると中音域,低音域に難聴が波及する。また全身投与においても初期においては高音障害型の聴力像を呈する。全身投与では両側対称性であるが,局所投与の場合は左右差が生じる。
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