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1.はじめに
今日の日本は世界でも類をみない高齢化社会を迎えようとしており,加齢による難聴者をはじめとして補聴器装用など何らかの対応を必要とする難聴者の数も急激に増加している.一方,近年の様々な情報手段のIT化によって,社会的に必要とされる情報の入手や発信などのコミュニケーションには視覚や聴覚が不可欠になっている.例えばインターネットの普及により迅速かつ正確に情報を得ようとすれば視覚が必要であり,携帯電話などによる簡便なコミュニケーションには聴覚が不可欠である.今後,このような情報手段はさらに急速に進歩することが予想されるが,視覚や聴覚にハンディキャップを有する高齢者などのIT弱者が,最新のコミュニケーションを等しく享受できる方策を講じる必要があることはいうまでもない.
このような,高齢化に伴い増加している聴覚障害の多くは感覚器である内耳蝸牛の障害による感音難聴であり,一部の急性感音難聴を除いて根本的な治療法は確立されていない.したがって,このような感音難聴では補聴器による聴覚リハビリテーションが治療の中心となるが,現在用いられている補聴器の多くは聴覚障害者が期待するクオリティには達していない.このような問題点の克服には,デジタル補聴器や埋め込み型補聴器をはじめとして今後の研究,開発を待たなければならないが,現時点で行うべきことは感音難聴の早期診断とその予防法を講ずることである.21世紀は予防医学の時代とも言われるように,聴覚障害に関しても早期診断が重要であることは明らかであり,そのための臨床検査としての聴覚検査の重要性が指摘されている.
今月の主題である「聴覚障害とその診断」では,様々な聴覚障害に対する最新の聴覚検査について各分野のエキスパートに執筆をお願いした.それぞれの詳細は各稿をお読みいただきたいが,本稿では聴覚障害に対する最新の聴覚検査について概説する.
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