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特集 こんなときどうする?―鼻科手術編
前篩骨動脈か,出血が止まらない
Intra-operative bleeding from the anterior ethmoid artery
中川 隆之
1
Takayuki Nakagawa
1
1京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.823-828
発行日 2011年10月20日
Published Date 2011/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101975
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Ⅰ.概説
鼻科手術,特に内視鏡下鼻内手術では,出血のコントロールが手術成功の鍵となる。内視鏡下手術の利点は,術野がよく見えることであるがゆえに,良好な視野の確保の観点からも,術中出血制御は誰もが知りたい上達へのポイントといえる。筆者らは,内視鏡下鼻内手術解剖実習をオープンセミナーとして年に2回開催しているが,最もよく受ける質問の一つが,術中の出血をどうコントロールしているのか?ということである。術中出血の中でも,動脈性の出血は時間当たりの出血量も多く,動脈から吹き出す「水柱」の視覚的効果から,初心者は冷静さを失いがちである。本稿では,内視鏡下鼻内手術中に経験したくない合併症の代表である前篩骨動脈からの出血への対処について述べる。
前篩骨動脈は,眼動脈の枝であり,眼窩から前篩骨孔を通り,中鼻甲介の天蓋付着部に至り,硬膜に向かう前硬膜枝と鼻腔前方に向かう前鼻枝に分かれる(図1)。術中出血で問題となるのは,このうち,眼窩内側壁と中鼻甲介の間の部分である。動脈は,神経とともに骨壁の中を通るため,ベテラン術者でも適切に同定できないこともある。多くのトラブルは,完全な篩骨洞開放を目指して,あるいは,前頭洞の広い開放を企図して,前篩骨動脈を含む篩骨洞隔壁を削除することにより引き起こされる。実際の対応については,「Ⅱ.状況の把握―考えられる選択肢」と「Ⅲ.対処の実際」の項で説明することとし,本項では,前篩骨動脈の手術解剖について簡潔に記載する。
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