特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅲ.診断・治療をマスターする
15.深頸部膿瘍
佐藤 邦広
1
,
髙橋 姿
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科学講座
pp.290-294
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101861
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Ⅰ 病因・病態
頸部には筋,血管,神経などの器官の周囲に,線維性結合織として筋膜(fascia)が存在し,その筋膜間間隙に炎症が生じた状態が深頸部感染症である。一般的に頸部間隙内のリンパ節炎,あるいは疎性結合織の炎症である蜂窩織炎が先行し,炎症が悪化・進行して膿瘍形成に至ると深頸部膿瘍となる1)。
深頸部膿瘍は頸部間隙内の炎症であるため,間隙に関する解剖学的知識が重要である。図1に舌骨上(中咽頭レベル)と舌骨下(喉頭レベル)における軸位断で示される間隙を示す2)。炎症は,進行すると一つの間隙にとどまらず,隣接する間隙に容易に進展する。また,内臓間隙,頸動脈間隙,咽頭後間隙は縦隔への主な侵入ルートとなるため,これらの間隙に炎症が生じている場合には縦隔炎・縦隔膿瘍の合併の有無に留意する必要がある3)。
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