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Ⅰ 一般的な特徴
ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV)はヘルペスウイルスのなかで,ヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)に分類され,ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)やヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)と同じヘルペスウイルス科βヘルペスウイルス亜科に属する2本鎖DNAウイルスである。サイトメガロウイルスは種特異性が高く,ヒトにはヒト,マウスにはマウス,モルモットにはモルモットのサイトメガロウイルスが感染する。表1にヒトを宿主とするヘルペスウイルスを示す1)。以下,ヒトサイトメガロウイルスについて述べるが,サイトメガロウイルス(CMV)と記載する。
CMVはほかのヘルペスウイルスと同様に初感染後宿主の体内に潜伏感染し,生涯宿主と共存するという特徴をもつ。感染ルートとして,周産期には産道の分泌液,出生後には母乳,唾液,尿,体液などと粘膜の接触が挙げられる。CMVは健常人の多くが幼少時不顕性感染し,特に大きな病態を引き起こすことなく潜伏した状態にある。この状態では感染性ウイルス粒子は検出されず,ウイルスゲノムのみが骨髄などの潜伏感染部位に観察される。ところが,後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)などの免疫不全個体,あるいは癌化学療法や造血幹細胞移植時における免疫抑制剤の使用など,宿主の免疫が低下した際に潜伏感染状態から再活性化し,重篤な日和見感染症やさまざまな病態を引き起こす。さらに妊婦が初感染,もしくは再感染した場合,経胎盤的に胎児に感染し,きわめて重篤な先天感染症を引き起こす場合がある2)。
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