特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
1.細菌・原虫感染症
2)肺炎球菌
平野 隆
1
1大分大学医学部・医学系研究科耳鼻咽喉科
pp.77-82
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101821
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Ⅰ 一般的特徴と感染機序
肺炎球菌は,ブドウ球菌とならびヒトに対して病原性の強いグラム陽性球菌であり,感染症原因菌として最も頻回に分離される細菌の1つである。肺炎球菌は厚い莢膜をもった細菌で,莢膜は細胞質で合成された単糖体が重合し,細胞膜転移酵素により細胞表面に移動した多糖体であり,細胞壁のpeptideglycanと共有結合している。その莢膜多糖体の抗原特異性は多様であり,少なくとも91種類もの血清型に分類されている。
肺炎球菌は鼻咽腔に侵入する際に,まず鼻咽腔粘液層と遭遇するが,多くの肺炎球菌の莢膜多糖体は電荷が負に帯電しており,粘液に多く含まれるシアル酸が豊富なムコ多糖体との電気斥力により,肺炎球菌の莢膜は粘液層における取り込み作用を減弱させ粘膜上皮への接着を容易にしている。肺炎球菌の菌体表面には多数の病原性因子を有しており,菌体の粘膜上皮への付着と定着に大きく関与していることが解明されている1)(表1)。
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