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Ⅰ 一般的特徴
連鎖球菌は直径1μm程度のグラム陽性球菌で,一つ一つの球菌が規則的に,直鎖状に配列して増殖し,光学顕微鏡下で観察すると『連なった鎖』のように見えるため,連鎖球菌と名付けられた。属名のStreptococcusは,ラテン語で『よじる』を意味するstrephoから派生したstreptos(曲げやすい,柔軟な)と,球菌を意味するcoccus(元は『(穀物の)粒』や『木の実』の意)に由来し,曲がりやすい紐のような配列をする球菌を意味する。鞭毛をもたないため非運動性であり,菌株によっては莢膜を有するものもある。一般に呼吸によるエネルギー産生は行わず,酸素のある状態でもない状態でも,もっぱら乳酸発酵によってエネルギーを得る。生化学的には,カタラーゼ陰性であることから,ほかの代表的なグラム陽性球菌と鑑別される。英語圏では,A群溶血性連鎖球菌を意味する『Group A Streptococci』の略であるGASが頻用されるため,日本でもこれを略称として用いることが多い。
連鎖球菌は,まずその溶血性によりα,β,γ溶血性の3群に分けられる。連鎖球菌をヒツジ血液寒天培地で培養すると,増殖した連鎖球菌コロニーの周りに溶血を起こし溶血環が観察されるものがある。完全な溶血を起こし透明な溶血環が観察されるものをβ溶血性連鎖球菌といい,不完全な溶血を起こし暗い緑色の変色でコロニーが囲まれるものをα溶血性連鎖球菌(緑色連鎖球菌),溶血を起こさないものをγ溶血性連鎖球菌という。γ溶血性連鎖球菌は,口腔内などに常在する菌であり,歯性感染症や化膿性リンパ節炎などの起炎菌となる可能性はあるが,臨床的に重要となる菌は少ない。
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