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Ⅰ.はじめに
1951(昭和26)年に成立施行された『結核予防法』により,国内における結核の死亡率や罹患率は順調に低下していたが,近年罹患率の低下速度は減少し,1997(平成9)年に新規罹患患者が前年を上回ったことから,1999(平成11)年7月に当時の厚生大臣から『結核緊急事態宣言』が出された。宣言では『現在の我が国の結核の状況は,今後,患者数が増加し多剤耐性結核がまん延する等,再興感染症として猛威をふるい続けるか否かの分岐点に立っており,まさに今日,医療関係者や行政担当者を含めた国民一人一人が結核を過去の病気として捉えるのを改め,国民の健康を脅かす大きな問題として取り組んでいかなければ,将来に大きな禍根を残すこととなる』としている。この宣言を受け,結核予防法は2005(平成17)年4月に定期健康診断,定期外健康診断の対象者,方法などの見直し,BCG直接接種の実施などの改正が施行され,さらに2006(平成18)年には結核予防法を廃止して,感染症法に統合する法律案が成立し,2007(平成19)年度から改正感染症法の施行となった。また,BCG接種については,予防接種法に統合された。
わが国の2008(平成20)年の結核新登録患者数は24,760人,人口10万人対の罹患率は19.4人であり,減少傾向にある。しかしGlobal Tuberculosis Control WHO Report 2009の報告では,日本の罹患率は他の先進諸国の罹患率に比べ,2~4倍もの罹患率であり(表1),現在も中まん延国とされている。
結核予防会結核研究所疫学情報センター(http://jata.or.jp/rit/ekigaku/)が公表している『活動性分類別結核登録者数および有病率の年次推移』によると,結核のなかで『肺外結核』の全結核症中に占める割合は増加傾向にある。活動性全結核に対する活動性肺外結核の割合は1989(平成元)年に6.2%だったが,2008(平成20)年には22.5%(4,503人)と増加している。肺外結核はわれわれ耳鼻咽喉科医師が直接治療を担当する機会が多く,ここ数年でも結核性中耳炎や鼻腔結核,咽頭喉頭結核,頸部リンパ節結核など多数報告されており1~8),結核に関する十分な知識をもって日常診療に従事する必要がある。
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