特集 オフィスサージャリー・ショートステイサージャリー
6.鼓膜形成術(接着法)
須納瀬 弘
1
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科
pp.49-58
発行日 2008年4月30日
Published Date 2008/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101245
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Ⅰ はじめに
慢性中耳炎は鼓膜に穿孔をきたして耳漏を反復する疾患である。穿孔を放置して炎症を反復すると,中耳では鼓室硬化症や耳小骨の破壊などの伝音障害が進行し,時に真珠腫の原因となる。また,内耳が障害されるとめまいや骨導閾値の上昇が起こる。穿孔を閉鎖して炎症を止めることが望ましいが,施設によっては手術に際して長期の入院を強いられたため,治療に対する敷居が高く,外来で耳洗浄のみを行う患者も少なくなかった。
接着法は小さな皮膚切開しか要さず,低侵襲なため,外来での日帰り手術や1泊程度の手術が可能であり,手術をためらっていた多くの患者に大きな朗報をもたらした。開発した湯浅ら1)の報告からほぼ20年を経過した現在では,多くの成書に術式の解説がなされ,多数の施設で採用されている。外耳道が広い症例で,緊張部の小穿孔を閉鎖することは容易であり,中耳マイクロサージャリーの初学者がまず行う手術として位置づけることもできる。しかし,繊細な中耳を扱っていることを忘れてはならない。適応の判断と手術法を誤ると,穿孔が閉鎖しないばかりでなく,医原性の合併症を引き起こす可能性もある。本稿では,特に初学者を対象として,われわれが行っている接着法についてポイントとコツを記載したい。
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